逼迫(ひっぱく)日記

1歩2歩進んで3歩戻る。

忘れられない嘘

僕は忘れられない嘘がある。

自分にも相手にもついた嘘。


高校2年生の夏。


僕と男の子のA君、女の子のTちゃん

この男子2、女子1のグループでよく遊んでいた。

同じクラスで知り合い、Tちゃんの勧めで

同じ3人共同じ所でバイトを始めた。

学校の後の慣れない仕事。慣れない環境。

初めはしんどかったけど、好きな2人と

学校以外でも遊べる時間がとても幸せだった。


僕にないものを持っている2人。

この頃の僕は親の制限も厳しく、常識に縛られ

ていたから、Tちゃんからの遊びの誘いや

予想していなかった提案をされると、

怒られないかな?ダメじゃないかな??

と始めに考えてしまい否定から入っていた。


一方A君の口癖は「悩むならやったらええがな」

僕とは違いなんでも肯定してくれる。

全ての提案を叶えようとしてくれる。

先のことより今を見ているとても男らしい子。

いい所を探すようになったのはこの子のお陰。


Tちゃんの口癖は「楽しく生きたい!!」

無邪気すぎるくらい明るくて、優しくて

でも少し危なっかしい、放っておけない子。

世話がかかる所もかわいくて

話をするのがとてもすきだった。


みんなバイト代はこの3人で遊ぶ時に

ほとんど使っていた。

水風船を沢山買って、公園で水を入れて

ぶつけ合う。

バイトで花火に行けなかったから変わりに

花火を沢山買ってきて3人だけの花火大会。

親に友達の家に泊まると嘘をついて

3人で2泊3日の旅行。

楽しみすぎて眠れなかった僕は

3人分の旅のしおりまで作った。

青春。これが青春だと実感していた。

「ずっとこのまま3人で過ごすんだろうな〜〜」

僕は本気でそう思っていた。


だがある日、A君がよそよそしかった。

あまり自分の事を話す子でもなかったけど

どこかいつもと違う。

「あれ??なにかあったのかな?大丈夫かな?」

そう思い聞くも、特になにもと言われる。

気のせいか!と思っていると帰り道

Tちゃんから「昨日A君と遊んで遅くなったから

2人で泊まったんだ!」そう聞かされた。

その時、心のどこかで3人で遊ぶことが

当たり前だと思っていた僕は、A君が泊まった

ことを隠したことが少し悲しかった。


今までだって、僕が参加できず

2人だけで泊まったことが何度もあった。

だから、隠ししれたことを疑問に思った。

(後日知ったが、この日だけはA君が意図して

 2人で過ごしたいと伝えたらしい。)


この日を境にA君は3人ではなく

Tちゃんをよく誘うようになった。

もちろん僕も2人で遊ぶ時もあるが

/A君とTちゃん/ 3人 /

この2つの組み合わせが増えていった。


ある日のバイトの帰り

Tちゃんと帰る時間が同じになりご飯を食べに行った。その帰り道、「この後どうする?」

Tちゃんはそう聞いてきた。時間は夜7時。

「A君呼ぶ?それとも2人で遊ぶ?」

僕はこの時悩んだ。

遊べるなら僕も2人で遊びたい。2人がいい。

だけど、3人で遊ぶこともすきだった。

A君がTちゃんを好きだと言うことは

少し理解していた。

そして僕もTちゃんが好きだということも

少し理解していた。

好きだから遊びたい。好きだから話したい。

好きな子と一緒だからバイトも頑張れる。

なのに、自信がなかった。

A君に勝てると思えなかった。

すぐ否定する僕に比べて

A君は全てを肯定し実際に望みを叶えきた。

こんな僕と2人で遊んでも楽しくなくなる。

勝手に自分に失望し

「せっかくだし3人で遊ぼうよ☺️」

嘘をついた。


それから月日が経ち高校3年の夏。

僕はどんどん余裕や自信がなくなり

無神経な言葉でTちゃんを泣かせてしまう。

泣かせてしまい何度も何度も後悔したその夜。

A君がTちゃんに会いに行き

T君が告白して2人は付き合い始める。

たった一言。たった一言。

「2人で遊びたい!」

この一言が言えていれば

関係も変わっていたんじゃないかな。

もっと自分に自信があれば

相手に気持ちを伝えれたんじゃないかな。


好きになる、恋人になる勇気がなかった。

だから2人ではなく、いつも3人で遊ぼうとした。

嘘なんて沢山ついてきたけど

あの時、自分の心についた嘘。

結果的に好きだった相手を泣かせてしまった

あの始まりの嘘を僕は一生忘れない。